土曜日が好き

土曜日が好きなので

マーズ通信①

 

12:30 PM

 

「あー、あー、こんにちはー、こんばんはー。ハロー。だれか聞こえてますか。こちらは火星です。なにやら通信機のようなものを発見して面白そうなので喋ってみてます。いかがですか、まあ誰にも届いてないと思うけど。だいたいこの機械が動いてるのかも分からないので、実は電源入ってないのにずっと一人でお話ししてるだけなのかもしれないの。やばいね。でも喋るよ。だってこの星には多分、私一人しかいなくなっちゃったし楽しい事も何にもないから暇だしね。て言っても楽しい事何にもないから話すことも特にないんだけどさ、まあ付き合ってよ。ねえ知ってる?火星は地球よりも1日の長さが38分長いんだよ。38分もあれば何が出来るかな、読書の習慣がない人は寝る前の30分読書とかやってみたらいいかもね。残りの8分で明日はどんな1日にしようかなって、ひとりで考えながら歯磨きしてトイレ行って電気消して寝るの。この8分ていうのがなんか素敵な時間よね」

 

「あなたは火星人ですか?」

 

「いえ、火星にいますが、地球人でした。あなたも地球のかたですか?」

 

「はい、地球のかたです。地球にいます」

 

「すごい。繋がってたんだ。地球のどこらへんですか」

 

「北半球です」

 

「北半球ですか。寒さは平気ですか?」

 

「寒くはないです。家の中にいますから」

 

「家の中にいても寒いときは寒いじゃないですか」

 

「確かにそうですね。ところで、火星ではトマトが栽培できると聞いたことがありますが、火星で育ったトマトは美味しいものなのでしょうか」

 

「火星は寒いのか聞いてくれないんですね。トマトは育ててないから分かりませんが、普通なんじゃないですか。あと、あなたは何を通してお話しされているんですか」

 

「すみません。子どもが起きてきたのでしばらく離れます」

 

「はい。話し声で起こしちゃいましたか。ごめんなさい」

 

「大丈夫ですよ。また来ます」

 

「はい。待ってます」

 

 

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12:32 PM

 

マーズ通信①→→→②

 

チミたちはどう生きるか④

何もない朝に君を思い出すんだ

何もない僕が君に出来ること

 

ヨペル「なんなんですか?このお話は」

 

おじさん「これは、サヨナラ研究を元に私が考案、監修した新感覚コントだよ」

 

ヨペル「コントなんですか、面白いんですか?」

 

おじさん「面白いじゃないか」

 

ヨペル「うーん…どうなんでしょう」

 

おじさん「まあ、君の言いたいことも分からなくはないが、時代は進んでいるということさ。単に人を笑わせるためだけに作られた笑いは、楽しいかもしれないが面白くはない。ファニーではあるがインタレスティングではないんだよ。お笑いだけでなく、良くも悪くも消費されるだけの表現はどんどん生き残りづらい世の中になっている。だからこそ、人間が他の動物には持つことの許されなかったユーモアという知性を発揮し、これから自分たちはどう生きていけば良いのかを考えるための笑いが必要になってくると私は考えているんだ」

 

ヨペル「そうですか」

 

おじさん「そうなんです」

 

ヨペル「それを伝えるためにわざわざ未来からやってきたんですか?」

 

おじさん「それもあるが、私は今かなりスランプに陥っていてね、君と一緒にコントを考えてみたいと思ったんだ。君のアドバイスがほしい」

 

ヨペル「わろた」

 

おじさん「来ちゃった史については、どう感じた?」

 

ヨペル「まずオチが思いつかなかったんだなって思いましたよ。急にミュージカル調になって投げやり感が拭えません」

 

おじさん「するどいところを突いてくるね」

 

ヨペル「別にそれが悪いと言っているわけではないんですが、最後に2人が分かり合えたみたいにするなら、ちゃんと学生がフェミニズム的な気付きにたどり着く道筋を分かりやすく示さないと」

 

おじさん「うん」

 

ヨペル「コントを見た人が、自分がこれからどう生きていこうって思わず考えてしまうようなものを作りたいんでしょ?それならもっとしっかり構成を考えて、道筋を作らないと!それに説教臭いのも気になるなあ」

 

おじさん「ごめんね」

 

ヨペル「とりあえず、やりたいことは分かったから、次会う時までに面白いのを考えといてよ。また見てあげるから」

 

おじさん「ありがとう。なるべく早めに持っていく」

 

 

一週間後

 

 

おじさん「ヨペルくん」

 

ヨペル「やあ、おじさん。新しいコントはできたの?」

 

おじさん「ああ、来ちゃった史の反省を踏まえて考えてみたよ。感想を聞かせてほしい」

 

ヨペル「オーケー」

 

 

5分後

 

 

ヨペル「…こ、これは…!?」

 

 

 

チミたちはどう生きるか⑤へ続く

 

 

おれの汚い部屋について

25年生きてきて常に住んでいる部屋が散らかっているのは、片付けられない性格というのもあると思うけどまあ僕の人生こんなもんかと散らかってる部屋を見ながら妙に納得というか、これまでの荒んだ吉田の人生を見ているような、言い換えるとこの部屋が吉田の人生を体現していて、それが故にああ1人じゃない感あるなと安心できるわけ。つまりそん時起きた辛いことたちに対してこの部屋の散らかり様こそが唯一の精神安定剤だったりもしているから、いつのまにか汚い部屋が落ち着くようになったのだろうな、という僕の推察は多分結構間違っていて、でもここからが大切なところなのでよく聞いてほしいのだけど、つまり僕が言いたいのは本当の原因の比率が片付けられない性格が96% 汚い部屋が吉田の精神安定剤になっていたが4%だったとしても、この4%の切実さと豊かさをお前らホンマに理解すべきやねんということだ。そしたらマジで音楽とか映画とか小説とかあげていったらキリがないけどとにかく生きている人間の切実な感情から生み出された全ての作品の中にある何か(これは本当に感性によって姿形を変えるからマジで「何か」としか言いようがないんやが)に心の底からタッチできるようになるのになーと上から目線なのか底から目線なのか分からないけど思うわけ。いつだって切実なものは4%くらいで、その4%くらいの何かはそのほか大半を占める性格とか環境とかそういう分かりやすいものに隠れてて見えづらいんだけど、だけどだからこそおれたちの見えづらい心の中の4%の何かと、画面の向こうイヤホンの向こう文字列の向こうにいる彼らのどうにもならない感情の中にある切実な何かが混ざり合った瞬間におれたちはその何かが何なのかほんのちょっと分かるんじゃないか。そんな風に思う。というか、水は海に向かって流れる3巻を読んで思った。

チミたちはどう生きるか③

コント『来ちゃった史』

 

 

〜 とあるアパートの一室にて 〜

 

男「今年から大学生になったのにオンライン授業ばっかりで、つまんねえなー。合コンとか行ってみてえなー彼女つくりたいぜー」

 

ピンポーン

 

男「ん?こんな朝から誰だろ。はーい」

 

ガチャっ

 

謎の男「おはようございます。あなたドミノピザ大学の学生さんですよね。突然ですが歴史に興味はありませんか?」

 

男「なんですか急に!誰ですかあなた。興味ないですよ!」

 

謎の男「まあそんなに警戒しないで。私はドミノピザ大学で『来ちゃった史』の授業を教えている柳沢という者です」

 

男「柳沢さんって、お隣に住んでる柳沢さんですか?」

 

柳沢「そうです。たまたま隣の部屋にドミピ生がお住まいと聞いて、ついつい来ちゃいました」

 

男「いや、でも僕、そんな授業とってないですよ」

 

柳沢「『来ちゃった』というのは、漫画やドラマなどで、彼女に当たる登場人物が、彼氏の家に突然訪問し、困惑する彼氏に放つ第一声として広く認知されている慣用表現ですが」

 

男「急に授業を始めないでください。怖いんですけど。そして玄関先で何を言ってるんですか」

 

柳沢「『来ちゃった』が日本で最初に使われたのは、どの作品かご存知ですか?」

 

男「いや、興味ないんで。帰ってくれませんか」

 

柳沢「諸説ありますが、1番有力なのは、2006年に放送されたテレビドラマ『Dr コトー診療所』で、コトー先生こと五島健助が志木那島(しきなじま)の島民の家に突然訪問した際に言ったシーンが最初とされています」

 

男「違うと思いますよ」

 

柳沢「え…?」

 

男「まず早速彼女彼氏の関係じゃないじゃないですか」

 

柳沢「いや、まあ、そうだけど。しょうがないじゃん」

 

男「爪が甘いんですよ。起源は大事なんですから、もっと頑張って調査してくださいよ。昔の少女漫画を読むとか、普通そういうところから始めるでしょう。なんですかDr コトー診療所って。そんなわけないでしょ」

 

柳沢「学生さん。確かにあなたの言う通り、起源は大事ですが、もっと大事なことがあるはずです。『来ちゃった❤️』というセリフによって物語にもたらされる影響や、我々が感じる彼女についての印象の変化についてこそ論じるべきなのではないですか?更には、彼女は何故『来ちゃった❤️』のか。その心理的動線を見逃さないように注意深く物語の文脈及び女心を汲み取る能力こそ、学生さんが今1番欲しているものではないんですか?」

 

男「ぐぬぬ、たしかに…」

 

柳沢「『来ちゃった史』とは、古今東西の『来ちゃった❤️』のセリフに潜む微かな心の揺らぎに耳を澄まし、年代別に記録していくことで、時代によって移りゆく女心を読み解く学問なんです。そこを勘違いしないでいただきたい」

 

男「すみません生意気でした。汚い部屋ですが、どうぞ上がってください」

 

柳沢「分かればいいんです。では、お邪魔します」

 

男「…じゃあ、早速どうすれば女の子に『来ちゃった❤️』って言ってもらえるようになるのか教えてください」

 

柳沢「話聞いてた?」

 

男「え?違うの?」

 

柳沢「あのね、モテテク伝授のコーナーじゃないんだよ。ふざけたことを言いやがって」

 

男「モテテクじゃないなら、何のために男が女心を理解する必要があるんですかー!」

 

柳沢「そういうとこだぞ学生!結局は己の醜い欲望が第一になっているではないか。学問とは、人類が調和に近づくためのものなんだ!貴様のくだらない所有欲を満たすためのものではない!男と女、その間には深い溝があり、未だそれは深まっていくばかり。お前らみたいな者たちのせいでな。学問とは、その溝を埋めるものだ。本来は渡ることのできない2つの地点に橋をかけるものであるべきなんだ。

私たちは分り合うためにその橋を渡り、見えない彼女たちに会いに行く。私たちは分り合うために、女心を学ばないといけないんだ!

今こそ…そう、『来ちゃった史』で!」

 

男「先生…、おれ…来ちゃったよ…完全に来ちゃった、本当にごめん」

 

柳沢「見えたか。学生。その橋が見えたか」

 

男「見えたよ。先生。あの橋が見えたよ」

 

柳沢「ならば、渡るがよい。

   その橋を渡るがよい」

 

男「ええ、渡りますよ。あの橋を渡りますよ」

 

柳沢「その先に、どんな景色が待っているか」

 

男と柳沢「それは誰にも分からない〜」

 

男「恐怖の風が、吹いたなら〜」

 

柳沢「凍てつく雨に、降られたら〜」

 

男「一寸先は」

 

柳沢「溝・溝・溝・溝!」

 

男「溝・溝・溝溝・溝・溝・溝溝」

 

男と柳沢「み〜〜〜ぞ〜〜〜〜〜♪」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

チミたちはどう生きるか②

どうして僕 いつもひとりなんだろ
ここじゃないどこかへ行きたかった


ヨペル「ちょっと信じられないですけど、どうしておじさんになった僕がここにいるんですか」


おじさん「ヨペル君、未来から来たと言ってもまだ僕は25だ。おじさん呼ばわりはやめてくれないか」


ヨペル「それはすみません。でも、なんのために、わざわざ女性になりすまして僕に会いに来たんですか」


おじさん「端的に言うとそれは、君が一人ぼっちだからだよ。僕は君の孤独を終わらせに、やって来たわけさ」


ヨペル「かっこいいこと言いますね」


おじさん「ヨペル君、君はまだ知らないんだ。これから君を襲う本当の孤独を」


ヨペル「今でも十分苦しいのに、まだ孤独になっていくんですか。それは嫌だな、僕、なんにも悪いことしてないのに」


おじさん「うん。もう死んでしまいたいと思う直前まで行くくらい、君の孤独はますます深くなっていく。僕はずいぶん苦しんだ。君には僕のような辛さは味わって欲しくないんだ」


ヨペル「はぁ…」


おじさん「でも、どうにか深い孤独を乗り越えて、幸福を掴めた。今の僕だからこそ君に伝えられることがあると思ってね、それを話しに来たんだ」


ヨペル「うーん、まだ信じられてないんですけど、ひとまずそういうことにしましょう。でも多分無駄です、どれだけ頑張っても僕に彼女はできないと思いますよ」


おじさん「どうして、そう思うんだい」


ヨペル「おじさん、あなたが未来の僕だというなら分かるでしょう。僕は普通の人間として生きるには欠落が多すぎる、そしてその1つ1つが複雑に絡み合っていて、とてもじゃないが処理できない。とんでもなく不器用で何をやらせてもダメなんですよ。特に、恋愛をする時に必要なコミュニケーション力に関しては一切持ち合わせていないんです」


おじさん「そうだね。分かるよ、僕もずっと同じ悩みを抱えて生きてきたからね。君はずっと自分自身の情けなさを憂いながら、必死にもがいている。周りなんて気にするなと言う人もいるが、そんな言説はいかにも恵まれている奴らが考えそうな綺麗事でしかない。君には君の幸せへ向かうペースがあると自分に言い聞かせても、テレビをつければ恋愛ドラマがやっているし、街を歩けばカップルが歩いている。それを見たくなくて、どこかのお店に逃げ込めば有線でラブソングがかかっていたりする。逃げられるものではない。人間は恋愛が大好きなんだ。そして残念ながら、恋愛が出来なければ、人として何かが欠けていると思ってしまうような風潮からも、逃げることはできない。恋愛至上主義の世の中は既に完成しちゃっているのだよ。その風潮に抗うにはかなりの体力と精神力が必要だ。抵抗するエネルギーは無いと言うのなら、僕らは大人しく彼女を作って生きていくしかない」


ヨペル「未来でも、未だに恋愛主義なんですね。多様性が大事って言われてても、そんなにうまいこと世の中は変わらないものですね」


おじさん「そうだね。でも、君が苦しみを抱えるのは、世の中の風潮が君を追い込んだ結果と言うこともできるが、本質は別にある。君の抱えなければならない本当の問題は、世間ではなく、君自身の心が引き起こしている問題なんだ」


ヨペル「まあそうなんだろうけど、気持ちの問題なんてどうしようもなくないですか?そんな簡単に人の心は変わりませんよ」


おじさん「ヨペルくん、心が苦しい時に1番するべきことは何だと思う?それはね、その心がどうしてそんなに苦しいのか徹底的に分析することだよ」


ヨペル「分析ですか。そんな難しそうなこと僕にできるのかな」


おじさん「ヨペルくんの生きている時代では、孤独な心を分析する学問がまだ進んでいないんだが、この先の未来では、多くの学者がそれに向き合い、日々新しい研究結果が発表されている。そして何よりも驚くべきことに、その学問の第一人者となるのは、紛れもなくヨペルくん、君なんだ」


ヨペル「え!僕が?!まだ発見されてない新しい学問を生み出すなんて、そんなバカな…なんと言う学問なんですか?」


おじさん「さよなら研究という学術体系だ」


ヨペル「……」


おじさん「そして、今僕は、さよなら研究で発見された様々な知見を組み込んだコントを作っている」


ヨペル「……」





第三話へ続く

チミたちはどう生きるか①

hello my friend
君と僕なら永遠に 無敵さ
さようなら 美しき傷だらけの青春に


 家中の窓を閉め切ってしまえば、自分の声は自分以外聞くことはありませんし、自分が何かを考えたり思ったりしても、それが正しいことだとか間違ってることだとか判断してくれる人は自分しかいないわけです。

ですが、窓を開けたからと言って、
自分の声を聴こうとしている誰かがそこに居るわけではありませんから、
心の声を誰かに聴いてほしいだなんて、
無意識に願っていることに、 
自分が気づかないように、
今日も窓を閉めて、
外の景色をぼんやり眺めているのです。



ヨペル君は大学1年生です。


ほんとうの名前は吉田潤一、ヨペル君というのはあだ名です。年は18、今こそ青春を謳歌すべき時期であるのにも関わらず、1mmのキラキラも得ることができず、周りに置いて行かれてしまっている現状と、それを打開できないでいる自分自身に、彼はひどく頭をかかえています。


5月6日、晴れ


ベッドから起き上がり、時間を見ようと携帯を手に取ると、マッチングアプリから通知が来ていました。


「おっ」


アプリを開くと、昨晩いいね!した女性から、いいね!が返ってきており、そのうえ「今日の昼に会えませんか?」とお誘いのメッセージまで届いているではないですか。


「これはきている」


ヨペル君は「大丈夫です!」と即レスポンスして、相手からの返事を待ちました。そういえば、時計を見るのを忘れていたぞと思い出し、時間を確認すると11半を過ぎていました。


「やばいやばい、昼やん昼やん、すでに昼やん」


しばらくすると返事が来て、13時に梅田のカフェでお茶をすることになりました。どうにか間に合いそうだ。ほっと胸を撫で下ろしながら彼女のプロフィール写真を改めて見てみると、堀北真希似の顔立ちでショートボブの女性がこちらに笑みを向けています。ヨペル君の1番好きそうなタイプではありませんか。よかったね、ヨペル君。名前の欄には、Asuka🌷chan と書かれてありました。


ヨペル君は10分前にカフェに着きましたが、相手の女性はまだ来てませんでしたので、コーヒーを先に頼んで待つことにしました。


13時ちょうどになっても、Asuka🌷chanは現れません。Asuka🌷chanぽい子が入ってきたなと思っても、別の席にいるグループに合流したり、一人で本を読んだりしています。ヨペル君が、もしかしておれ騙されたか?と不安になってきたころに、一人の男性客がやってきました。男性は20代前半くらいで眼鏡をかけており、店内をキョロキョロ見渡しています。その視線がふいにヨペル君を捕らえたかと思うと、なんとその男性はヨペル君の座る席の方にぐんぐんと近づいて来たのです。


「え…?」


男性はヨペル君を見つめたまま、案の定ヨペル君の向かいに腰掛けてしまいました。そして、開口一番にこう言いました。


「君がヨペル君だね、会いたかったよ」


「いや、だれですか?Asuka🌷chanさんじゃないですよね」


すると、男性はすまなそうな顔をしながら、数秒の沈黙の後、ぎこちなく話し始めました。


「…騙してしまって、申し訳ないが、僕はAsuka🌷chanではないんだ。信じてもらえるか、分からないけれど、実は、僕は未来からやってきた君なんだよ。」



「なんだってぇ〜〜〜❗️」






第二話へ、つづく

裏スケ

久しぶりになんか書いてみようと思ったが、
ひとり嘘対談しか書いたことがない吉田。
普通のブログは初めてなので緊張している。


最近の休日は、色々な事情で予定が急に無くなることが多い。
誰かと会う約束をしてもどうせなくなるだろうという思いから、遊ぶ約束をした段階で、ドタキャンされたバージョンのスケジュールを同時に考えるようになった。これがとても楽しい。ドタキャンされても別の楽しみが待っているのだ。吉田はこれを「裏スケ(リスケ)」と呼んでいる。


例えば先週の土曜日。
本来は大学時代の友人らと京都に行く予定だったが、友人の体調不良で残念ながら延期になってしまう。ここですぐさま映画鑑賞に裏スケ。
なんらかの事情で京都行きが中止になった場合、話題のパラサイトを観に行くことに決めていた吉田は強かった。あらかじめ裏のスケジュールを考えておけば、すぐに気持ちを切り替えられる。
裏スケは急なキャンセルによる心のショックを和らげる効果もあるのだ。

パラサイトを観終えた吉田は、そのまま阪急のCoCo壱番屋でカレーを食べに行く(京都に行ってたらCoCo壱なんて食べないからね!)。カレーが運ばれてくるのを待っていると、次の日に会う約束をしていた人が、急な仕事が入って明日厳しいかもという連絡が(きました、裏スケの予感)。裏スケ遂行中に次なる裏スケをすることになるとはな。

結果的に、裏裏スケスケを余儀なくされた吉田。悲しいが、まだ俺の裏土曜は終わってないぞとNu茶屋町タワレコへ向かう。chara+yukiのアルバムが前日にリリースされたのだ。これはCDの音で聴きたい。リード曲の「楽しい蹴伸び」を聴いたときから、ドープなアルバムになりそうな予感があった。コラボのくせにコマーシャルな曲はなく、大衆を意識せず自由に楽しんでいる曲が多いのがかっこいい。最前線にいる人が何にも縛られず好きなように音楽で遊んでいるなんて…。明るいJ-POPの未来を想像して泣く。くるりの岸田さんがギターを弾いている曲と、「ひとりかもねむ」(テクノに柿本人麻呂!)が良い。CDで聴きたいと言いながらスマホに落としてBluetoothスピーカーで毎日聴いている。
裏土曜を完璧にキメた吉田。
家に帰ってからは記憶がないので省略する。

日曜日は、1917という映画を観に行った。また映画かよと己の裏スケボキャブラリーの無さに落胆しながら鑑賞。映画はとても素晴らしくて、なんならドタキャンされて正解だったかもと思った。吉田はこれを「裏スケ勝ち」と呼んでいる。戦争映画をワンカットで撮るなんて、面白くないはずがない。
その後、阪急の紀伊國屋(吉田の2019年ベスト本屋)に寄ってウロウロしていると、高橋源一郎が人生相談の本を出していたので買った。高橋源一郎の新刊は基本的に買いたくなってしまう。論語のやつはよく知らないので買ってないけど。タカハシさんの優しさが文章から滲み出る感じが好きなのだ。そういう意味で言うと人生相談なんて、優しさの極み、俺得。

しかしながら、人生相談の本をレジに持っていくのは少なからず恥ずかしさがある。店員さんにこの人悩んでいるんだなあと思われそう。だからあんまり悩みが無さそうな顔をしてお会計をしたけど、本当に悩んでいるときこそ、苦しさを外に出さない人にも見える。あるいは、全然悩みが無さそうなのに、なんでこの人は人生相談の本なんて買っているんだろ、怖いな。と思われるかもしれない。それが一番嫌かもしれない。ちなみに吉田は悩みだらけである。
でも思い切ってレジに並ぶのだ。


裏スケは普段できないようなことをする絶好のチャンスなのだから。